サロンの事業計画書の書き方|美容室・エステの記入例と売上計画
サロンの事業計画書の書き方|美容室・エステの記入例と売上計画
事業計画書は、融資の審査で最も重視される書類です。しかし多くの創業者が「月商100万円を目指します」という目標を書いて終わりにしてしまいます。審査で問われるのは意気込みではなく、その数字がどう積み上がるのかという根拠です。
本記事では、サロンの事業計画書の書き方を、記載項目・売上計画の積み上げ・資金計画・整合性チェックの順に解説します。融資の流れはサロン開業の融資ガイドを参照してください。
記載する項目
創業計画書の様式は提出先によって異なりますが、求められる内容は共通しています。
| 項目 | 書く内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 創業の動機 | なぜこの事業を始めるのか | 感情論ではなく、経験と市場の裏付け |
| 経営者の略歴 | 勤務先、年数、役職、担当実績 | 指名客数、月間売上などの数字を入れる |
| 取扱商品・サービス | メニューと価格帯 | 主力メニューと構成比を示す |
| 取引先・ターゲット | 想定する客層 | 年代、居住エリア、来店動機 |
| 従業員 | 雇用予定 | 人件費と連動させる |
| 借入の状況 | 個人の既存借入 | 隠さず記載する |
| 必要な資金と調達方法 | 設備資金・運転資金と、自己資金・借入の内訳 | 見積書と一致させる |
| 事業の見通し | 開業当初と軌道に乗った後の月次収支 | 根拠を数字で示す |
売上計画は積み上げで作る
最重要が最後の「事業の見通し」です。次の順で積み上げます。
- 物理的な上限を出す:min(席数, 同時に施術できるスタッフ数) × 1日の回転数 × 営業日数
- 稼働率を掛ける:開業当初は低く(例:40〜50%)、軌道に乗った後を高く(例:60〜70%)
- 客単価を置く:メニュー構成から算出する。前職の実績があれば根拠になる
- 売上=想定客数 × 客単価
- 段階を分ける:開業当初(1〜3か月)、半年後、1年後で数字を変える
開業初月から満席想定にしないでください。集客の立ち上がりを織り込んだ計画のほうが、現実的で信頼されます。稼働の考え方はサロンの予実管理の方法も参考になります。
費用側も同じ粒度で
- 変動費:材料費・薬剤費(売上に対する比率で置く。原価率の計算方法)
- 固定費:家賃、人件費、水道光熱費、通信費、システム利用料、広告費、リース料
- 支払利息:融資を受ける場合の利息部分(費用になるのは利息だけで、借入元金の返済は費用ではありません。元金は資金繰りの側で確認します)
そのうえで、損益分岐点となる客数を計算します(損益分岐点の計算方法)。「月に何人来れば黒字か」を自分の言葉で説明できる状態にしてください。
業種別の売上計画の積み上げ例
同じ「サロン」でも、供給力の単位と単価の作り方が業種で変わります。下記の数値は書き方を示すための例なので、自店のメニューと物件条件に置き換えてください。
美容室の場合(席数と回転で積む)
| 項目 | 開業当初の例 | 軌道に乗った後の例 |
|---|---|---|
| 席数(同時に施術できる数) | 3席(うち自分1名+スタッフ1名で実質2) | 3席(スタッフ2名で3) |
| 1日の来店数 | 6人 | 12人 |
| 営業日数 | 25日 | 25日 |
| 客単価 | 8,000円 | 9,000円 |
| 月商 | 6 × 25 × 8,000=120万円 | 12 × 25 × 9,000=270万円 |
美容室は席とスタッフのどちらが先に上限になるかで来店数の天井が決まります。席が3つでも施術者が2人なら同時進行は2件までです。稼働の考え方はサロンの席稼働率の計算方法にまとめています。
エステサロンの場合(ベッド数とコースで積む)
| 項目 | 開業当初の例 | 軌道に乗った後の例 |
|---|---|---|
| ベッド数 | 1台 | 2台 |
| 1日の施術件数 | 3件 | 7件 |
| 営業日数 | 24日 | 24日 |
| 1件あたり単価(コース消化分を含む) | 12,000円 | 13,000円 |
| 月商 | 3 × 24 × 12,000=86.4万円 | 7 × 24 × 13,000=218.4万円 |
エステは施術時間が長く1日の件数が伸びにくい一方、回数券やコース契約で先に入金が立つ業態です。事業計画では「入金の月」と「施術で消化する月」がずれる点に注意し、売上の計上と現金の動きを混同しないでください(サロンの資金繰り管理)。コース契約の管理はエステサロンの会計システムで扱っています。
月次収支の見通しの書き方(記入例)
「事業の見通し」欄は、開業当初と軌道に乗った後の2列で書きます。次は美容室の例です(金額は例示)。
| 項目 | 開業当初 | 軌道に乗った後 | 根拠の書き方 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 120万円 | 270万円 | 来店数×客単価の式を併記する |
| 材料費(変動費) | 12万円 | 27万円 | 売上に対する比率で置く(原価率) |
| 人件費 | 25万円 | 55万円 | 雇用予定の人数と時給・月給から |
| 家賃 | 20万円 | 20万円 | 物件資料の金額と一致させる |
| その他固定費 | 15万円 | 20万円 | 水道光熱費・通信費・システム利用料・広告費 |
| 支払利息 | 1万円 | 1万円 | 借入額と適用金利から算出 |
| 利益 | 47万円 | 147万円 | 上記の差額(税引前) |
数字を並べるだけでなく、開業当初と軌道後で変わる理由(集客の立ち上がり、スタッフ増員、単価の見直しなど)を一文で添えてください。理由のない増加は、審査で必ず問われます。
借入の返済は「利益」と「資金繰り」に分けて書く
上の表で費用に入れたのは支払利息だけです。借入元金の返済は費用ではないため、利益の計算には入りません。毎月の元利返済額(例: 5万円のうち利息1万円・元金4万円)を全額差し引いて「利益」と書くと、利益と手元の現金を混同した計画になります。
元金の返済は損益の表には現れないため、現金の出入りだけを並べた資金繰りの表で確認します。次は上の例に対応した開業当初1か月の例です(金額は例示)。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 月初の現金 | 200万円 | 前月末の残高 |
| 現金の入り(売上の入金) | 120万円 | 掛売りや回数券があると、売上を計上した月と入金の月がずれます |
| 現金の出(材料費・人件費・家賃・その他固定費) | 72万円 | 減価償却費は現金が出ないため含めません |
| 現金の出(元利返済) | 5万円 | 元金4万円+利息1万円。元金は費用ではありませんが現金は出ます |
| 月末の現金 | 243万円 | 月初 + 入り − 出 |
この例は掛売り・設備投資・税金の支払いがない前提で単純化しています。実際には売掛や在庫の増減、設備投資、税金の支払いでも現金が動くため、利益が残っている月でも返済資金が足りないことは起こり得ます。逆に減価償却費が大きい店では、利益を超える額を返済できることもあります。だからこそ、返済できるかは利益の額ではなく資金繰りの表で判断します(サロンの資金繰り管理)。
集客の方法を具体的に書く
売上計画に説得力を持たせるのは、その客数をどう集めるかです。
- 前職からの顧客(何人程度が見込めるか、その根拠)
- Web予約・自社サイトの準備状況(Web予約のメリット)
- Googleビジネスプロフィールの整備(サロンのローカルSEO対策)
- SNS運用の実績(既にフォロワーがいれば強い材料)
- 掲載媒体の利用予定と費用
- 開業時の告知計画(開業時の集客)
「チラシを配ります」だけでは弱く、チャネルごとの見込み客数と費用まで書けると精度が上がります。
資金計画は見積と一致させる
- 設備資金:物件取得費、内装工事、設備・什器、システム導入(見積書の金額と一致させる)
- 運転資金:開業後数か月分の家賃・人件費・仕入・広告費
- 調達:自己資金と借入希望額の内訳
運転資金を過少に見積もらないことが重要です。売上が計画どおりに立ち上がらない前提で、最低3〜6か月分の固定費を確保しておくと、資金ショートを避けられます(サロンの資金繰り管理)。
提出前の整合性チェック
- 売上計画の客数 × 客単価が、記載した月商と一致している
- 客数が席数・スタッフ数の物理的上限を超えていない
- 材料費が売上に対する比率として妥当(原価率)
- 人件費が雇用予定の人数と一致している
- 家賃が物件資料の金額と一致している
- 設備資金の合計が見積書の合計と一致している
- 支払利息だけを費用に入れ、借入元金の返済を利益の計算に混ぜていない
- 毎月の元利返済額(元金+利息)を、利益とは別に資金繰りの側で払えると確認している
- 開業当初と軌道後で、数字の変化に理由がある
数字の食い違いは信頼性を大きく損ないます。提出前に電卓で全部を検算してください。
開業後も使い続ける
事業計画書は提出したら終わりではありません。開業後は実績と並べて差を見ることで、経営の指針になります。予約・会計・顧客のデータが最初から蓄積されていれば、月次の実績を計画と比較するのは簡単です(売上分析機能・サロンの月次損益を把握する方法)。
計画と実績の差を毎月確認する習慣ができれば、追加融資や条件変更の相談でも、根拠のある説明ができます。
よくある質問
美容室とエステで事業計画書の書き方は違いますか?
構成は同じで、売上計画の積み上げ方が変わります。美容室は席数と施術者数、1日の来店数と客単価で積み、エステはベッド数と1件あたりの所要時間、コース単価で積みます。エステは回数券・コース契約で入金と施術の月がずれるため、売上の計上と現金の動きを分けて説明できると精度が上がります。
事業計画書のテンプレートはどこで入手できますか?
日本政策金融公庫(国民生活事業)が「創業計画書」の様式を Excel・PDF で公開しており、業種別の記入例も提供されています(美容業の例もあります)。ただし提出先によって様式や求められる添付書類は異なるため、申込先の案内を確認してください。融資の流れはサロン開業の融資ガイドにまとめています。
事業計画書の売上はどのくらいの精度で書くべきですか?
精度より、積み上げの過程が説明できることが重要です。席数と同時に施術できるスタッフ数から物理的な上限を出し、現実的な稼働率と客単価を掛けて算出してください。開業当初は稼働率を低めに置き、半年後・1年後で段階的に上げる形にすると現実的です。初月から満席想定の計画は、かえって信頼されません。
前職の顧客が来る前提で計画を立ててよいですか?
見込みとして書くことはできますが、根拠の説明が必要です。担当していた顧客数、来店周期、連絡が取れる範囲などを具体的に示してください。ただし、前職との契約内容によっては顧客への働きかけが制限される場合があります(競業避止や顧客の引き抜きに関する条項)。前職の契約を確認し、問題がない範囲で計画に織り込んでください。
運転資金はどのくらい見込むべきですか?
売上が計画どおりに立ち上がらない前提で、最低3〜6か月分の固定費(家賃・人件費・水道光熱費)と元利返済額を確保しておくのが安全です。運転資金を過少に見積もると、開業直後の集客が想定を下回ったときに資金が尽きます。設備にかける金額を抑えてでも、手元資金を厚くするほうがリスクは小さくなります。
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